動画配信作品とアカデミー賞

昨年、世界の三大映画祭の一つ「ヴェネチア」で最高賞・金獅子賞を獲得した「ROMA/ローマ」。今年のアカデミー賞では監督賞、撮影賞、外国映画賞の三部門を制した。
動画配信大手、米ネットフリックス製作のこの作品を「カンヌ」はフランスの劇場で公開しない作品はコンペに参加できないという新たな基準を設け排除した。
しかし米映画界はアカデミー賞の授与によって、IT企業製作のコンテンツも受け入れると懐の深いところを示した。ハリウッドにはスパイダーマンやバットマンといったシリーズものや二番煎じ、三番煎じの大作主義から脱却して、今後は作家色の強いドラマに舵を切ることを期待したい。


ROMA/ローマ
Roma 2018メキシコ・米 アルフォンソ・キュアロン
1970年代のメキシコ・ローマ地区が舞台。中流家庭の住み込み家政婦の視点から見た社会階級と家族。スペイン語、モノクロ映像、無名の役者・・・、映画がヒットする要素は全くない。しかしCG、大音響、大袈裟な演技に食傷気味の映画ファンがこの作品を高く評価した。
巨額の製作費とスター俳優を投入するハリウッドの過度な商業主義に背を向けた日本で言えば、成瀬己喜男の世界か。


グリーンブック
Green Book 2018米 ピーター・ファレリー
グリーンブックとは黒人が利用できる施設を記した旅行ガイド。
舞台は人種差別の色濃い1960年代の米国南部。インテリの黒人ピアニストと荒っぽいイタリア系用心棒兼運転手のロードムービー。
対立より連帯、憎しみより愛の友情物語風の造りにアメリカでは論争を呼んでいるそうだが、我々日本人には心温まるストーリーに見える。
トランプが移民敵視、憎悪、偏見を煽る中で、この種の作品を映画化する制作者の健全性と作品賞など三部門にアカデミー賞を与えたアカデミー会員の見識に拍手を送りたい。


バイス
Vice 2018米 アダム・マッケイ
オスカーはとる、とらないが重要ではなく、ノミネートされることが重要なのだという。業界から認められたことになるのだそうだ。その伝で言えば、今年8部門にノミネートされたバイスは凄い。
ブッシュ政権の副大統領デイック・チェイニーの権力欲に斬り込んだ伝記もの。9・11後のイラク大量破壊兵器のでっち上げをめぐるホワイトハウス内の権力闘争と混乱。当時の実写映像を短いショットでつなぎながら、効果音が興奮を煽る。画面転換の速さに眼がチラつく。
特筆すべきは、チェイニーを演じるため体重を20kg増やしたという主役クリスチャン・ベールの容貌。まさにそっくり。そっくりと言えばブッシュも、ラムズフェルドもパウエルもライスもそっくりである。
作品としての興趣には欠けるが、本人がまだ生きている内に映画にして歴史の検証を行う健全性には目を見張る。


記者たち 衝撃と畏怖の真実
Shock and Awe 2017米 ロブ・ライナー
こちらはイラクの大量破壊兵器保有に疑問を抱き、NYタイムス、Wポストなど有力紙は政府発表を鵜のみにするプロパガンダ だ◌゙と糾弾する中堅新聞社の記者たちの話し。
政府発表のウラを取るどころか提灯記事を書く読売、サンケイ、NHKなどメデイア必見の時節柄貴重な作品である。


家へ帰ろう
El Ultimo Traje 2017 アルゼンチン・スペイン パブロ・ソラルス
大戦中にアルゼンチンに逃れて生き延びたポーランド系ユダヤ人の老人が、故郷ポーランドに親友を訪ねる旅をする。
スペインまでは飛行機だが、その先は鉄道。「ドイツ」を通ることも、「ドイツ」を生涯、口にしないと決めた老人の人情劇。


ジュリアン
Jusqua la Garde 2017仏 グザヴィエ・ルグラン
母の居場所を問う父と追求をかわす息子。息子は母親を守るため必至でウソをつく。父親は共同親権を主張するが、母親は拒絶。息子は隔週末に父親と会うことになるが、面会はまさにサスペンス映画の緊張感。


ギルテイ
Den Skydige 2018デンマーク グスタフ・モーラー
画面に映る人物は一人だけ。緊急通報を受ける警察官の横顔と声、相手の緊迫した声、息づかい、背景音、クルマの走行音、電話のコール音。スクリーンに映し出されるのは狭い室内のそれだけ。ところが不思議なことにこれらが、観客にいま起こっている事態を想像させる。
こんなのありか。映画にまだこんなテがあったのか。異常なスリラー。 (2019.4.16)

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日本語の軽さ 安倍語の酷さ

 こんなタイトルを付けると、「日本語は世界に冠たる大言語である」と主張する言語社会学の泰斗鈴木孝夫氏に怒られそうだが、特に最近の安倍晋三の国会答弁はひどい。
与野党の圧倒的な力の差を背景に、野党議員を揶揄するようにニタつきながら、質問にまともに答えない、論点をずらす、問われもしない大風呂敷を広げる。つまるところは国民をバカ扱いしているのである。
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急増する外国人観光客

 観光庁が国土交通省の外局におかれて10年、訪日する外国人旅行者数は昨年3,100万人を超え、その旅行消費額は4.4兆円に達した。製造業に依存することなく、ギリシャやイタリア並みの観光立国を目指す政府の目的の一つは、一見達成されつつあるかに見える。 続きを読む: 急増する外国人観光客

3・11事故から8年

 福島事故後、全基運転停止中であった日本の原発は、再稼働9基、新規制基準審査中12基、廃炉20基の現状にある。
 民意は圧倒的に「原発ゼロ社会の実現」にあると思うのだが、安倍政権は原発を重要な基幹電源に位置づけ、 続きを読む: 3・11事故から8年

日本100名城

 口の悪い友人からは、いよいよ身辺整理かと言われそうだが、あながち的外れでもない。今週は先の「灯台」に次いで「城」について書く。
 しかし「城」の定義には、「軍事目的をもって選ばれた土地と、そこに設けられた防御的構築物」とする戦国大名の居城から、古くは地方豪族の「堀と木柵、土塁で囲まれた防御設備」まであり、それらを合計すると、かつて日本には25,000の「城」があったという。
 そして今、見学できるのは200城くらいらしいが、
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灯台ブーム

西洋式灯台の建設が始まってから150年、灯台ブームだという。例によって「灯台女子」なる人種も現れ、観光の呼び水にと目論む辺境の自治体も多いと聞く。
海上保安庁が管理する全国の灯台は3181基。この内普段から一般公開されている灯台(参観灯台)は16基。
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沖縄県民 辺野古「NO」

県民投票の投票率が50%を超え、反対票は昨年の知事選で得た玉城票を超えた。「埋め立て反対」の県民の圧倒的な民意がここに示され、政府や自民党は「民意とは言えない」とする根拠を失った。
しかし安倍政権は委細構わず辺野古埋め立てに突き進む。
ちょっと変じゃないか。 続きを読む: 沖縄県民 辺野古「NO」

名字・家紋大事典を買う

NHKテレビ『日本人のおなまえっ!』はクイズとしても、若干の知的好奇心を刺激する教養番組としても面白い。
月見里をやまなしさん、小鳥遊をたかなしさんと呼ぶなどは思いもよらない。前者は山がないと月がよく見えることから、後者は鷹がいないと小鳥が遊べることからこうなったそうである。
解説を聞けばなるほどと納得するが、日本人の先祖は随分粋で、ユーモアの精神をもっていたものだと感心する。
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映画2018年

通称キネ旬、キネマ旬報ベストテンの発表を心待ちにしていた。映画の評価を決める尺度はいろいろあっていい。好きなタイプ、嫌いなタイプ、好きな役者、嫌いな監督、ひとそれぞれでいい。
しかし長年の映画ファン、俳優は無理でも一度は映画の世界に入ろうと考えていた映画好き青年、 続きを読む: 映画2018年

北総鉄道(成田スカイアクセス線)に乗る

日本国有鉄道(JNR)が消えて30余年、だが「国鉄」、「私鉄」という区分が依然として口を衝く。JNRは7社に分割、民営化されたのだから、その時点で日本の鉄道(27,000㎞)のすべては私鉄・民鉄(一部公営)と呼称すべきものになった。
しかし国策として、或は地域住民のインフラとして整備した「国鉄」と私企業が利益追求を目的に建設した「私鉄」を同じ鉄道と考えるには些か抵抗があった。 続きを読む: 北総鉄道(成田スカイアクセス線)に乗る

九州トンネル紀行 無念の計画延期

久しぶりに九州のJR在来線に乗りに行こうと考えていた。長いトンネルを潜り抜けるローカル色豊かな閑散線に。
ところが災害には勝てない。一昨年7月に発生した九州北部豪雨は、乗るつもりでいた路線の橋梁を変形させ、トンネルに土砂を大量に流し込んで、今に至っても開通の見込みが立たない。計画はパーになった。口惜しいのでそのプランの一部を記しておく。 続きを読む: 九州トンネル紀行 無念の計画延期

ナイトキャップ Night Cap

不眠症解消のためにリキュールやブランデーなどアルコール度数の高い酒を就寝前に飲むことをナイトキャップという。寝る前にかぶる帽子のことではない。
眠るために寝酒を飲むことを習慣にすると、飲まないと眠れないことになり、アルコール依存症の原因にもなりかねない 続きを読む: ナイトキャップ Night Cap

新手の詐欺か? 700MHz受信対策工事

去年の秋口から、「ちかぢかTVが映らない、映像が乱れることになる可能性があります。そのための工事が必要になりますが無償です。費用の請求はありません。テレビの受信障害対策を装った詐欺や悪徳商法ではありません。」
と書かれたチラシが投函され始め、 続きを読む: 新手の詐欺か? 700MHz受信対策工事

「改憲」「脱原発」「災害対策」…講演会をはしごする

その年の世相を漢字一文字で表す今年の漢字、平成最後の年は「災」になった。
初代林家三平は立川談志を俎板にあげ、“あの人は落語界のテンサイですな。天の災いと書く”と笑わせたが、生きていれば、“あの方は政治のテンサイですな。天の災いと書く”と安倍晋三をからかったかもしれない。
それはともかくとして、2018年は
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濫読 ―昭和解体からテレビ戦争まで―

新聞の書評で、本屋の店先で、友人に薦められて、きっかけはさまざまだが、系統立てずに読了した2018年後半の図書のいくつか。


昭和解体 国鉄分割・民営化30年目の真実 牧久
500頁の大冊である。いまや死語に近いが、日本国有鉄道(JNR)は、1987年3月31日、115年におよぶ長い歴史の幕を閉じた。
それから30年、分割・民営化されたJR7社はいま20,000㎞の線路上をいわば私鉄として列車を走らせている。
国鉄の分割・民営化は37兆円を超える累積債務の処理、人員整理による経営合理化が表向きの理由であったが、真の目的は、国労、総評、社会党の解体を企図した戦後最大の政治経済事件であった と著者は主張する。
従ってこのノンフイクション作品に登場する主な人物は、政治家では田中角栄、三塚博、加藤六月、中曽根康弘、橋本龍太郎。労組側では細井宗一、富塚三夫、松崎明。国鉄では石田禮助、磯崎叡、藤井松太郎、高木文雄、仁杉巌、杉浦喬也。財界は土光敏光、瀬島龍三、言論界は内藤国夫、加藤寛、尾山太郎と多彩。

そして主役は国鉄改革三人組と言われた三人。
井出正敬 (1935年生まれ 東大経卒 JNR入社1959年)
松田昌士 (1936年 北大法卒 1961年)
葛西敬之 (1940年 東大法卒 1963年)
の面々である。

「国鉄解体 分割・民営化」は国労、総評、社会党潰しを狙った中曽根政権にとっては大成功であったが、国鉄の体制派からすれば、この改革三人組は「国鉄一家」に弓を引き解体を企てる反逆者であった。

本書は最盛期には60万人の組合員を擁した公共企業体・日本国有鉄道の38年間に及ぶ長い闘争の歴史を、政治、経済、労働運動などの面から多角的に検証した大作である。
鉄道好き、国鉄大好き人間にとって、これは無視できない読み物であった。そして強く感銘を受けたのは、「改革三人組」の信念と正義感、そして挫折を繰り返しながらも立ちあがる勇気とバイタリテイ。
生まれも社会人としてのスタートもほぼ同じ同期生としては、政・官の強大な圧力と内部の裏切り、暗闘、保身、憎悪が渦巻く中でよくぞ耐えたものだと驚嘆する。

同じころ青年将校を気取って、親会社の横暴とそれに与する無能な経営トップ排斥に立ち向かったことがあるが、これに比べると我々のやったことは児戯に等しい。
彼ら三人組の働きは、幕藩体制を打倒し明治維新を誕生させた維新の三傑を彷彿させる。
こののち三人は、JR西日本、東日本、東海の社長にそれぞれ就任した。


軌道 福知山線脱線事故JR西日本を変えた闘い 松本創
2005年4月に発生した福知山線脱線事故は、死者107人、負傷者562人を出す大惨事になった。本書は事故で妻と妹を失い、娘も重傷を負ったある遺族のJR西日本との闘いを追う400頁のノンフイクションである。
彼を支えたのは、なぜ妻や妹、娘がこんな目に遭わなければならなかったのかという原因究明の強い意志と、職業柄災害や公害の現場で行政や企業と向き合ってきた交渉力だけ。
一方JR西日本は当初企業体の過ちを認めず、あくまで運転士個人の責任と言い張る。そしてその張本人が長く社長と会長を務めたあの井出正敬氏。
国鉄の改革三人組の総司令官として辣腕を振るった同氏は、1995年1月の阪神淡路大震災において自ら陣頭指揮に立ち、ライバルの私鉄各社より圧倒的に早く復旧を果たし、その手腕を内外に示した。
そしてそれまで「井出商店」と揶揄されていたワンマン経営者の地位をついに「井出天皇」にまで高めたのである。
古い国鉄をぶっ壊した改革派井出が、何ゆえ周囲の誰もがもの言えない独裁体制を敷くに至ったのか。今もって謎である。
加害企業と被害者が同じテーブルについて、事故原因を話し合うという前例のない試みにまで繋がったのだが、井出は最後まで遺族の前に姿を現していないという。


傍流の記者 本城雅人

ミッドナイト・ジャーナル 本城雅人
二作とも新聞記者が主人公。新聞社内には派閥があり、権力闘争があり、他メデイアとの取材競争がある。
ネットニュースが溢れ、スピードではかなわないまでも、本当の情報はクリックすれば出てくるもんじゃないと、新聞の意義を信じ、プライドをかけて真実に迫ろうとする男女の記者を活写する。

著者は元産経新聞の記者。それゆえ新聞社内や記者クラブの雰囲気が非常に良く書けている。こちらも若いころ広報部門に在籍して新製品や新技術の情報をメデイアに提供することも仕事の一部であったので、経済紙、工業紙の記者との接触も多く、彼らの行動原理や意識について一応の知識がある。

そんなこともあって、この小説に登場する東都新聞、中央日報などを、これは読売、これは朝日と置き換えて読むと一段と興趣が増す。キャップ、デスク、部長、編集委員…、取材記者とはいえ、役職を駆けのぼる社内の競争意識や対抗意識は何処の会社も同じ事。20年も前に辞めた事を忘れてしばし登場人物に感情移入する。企業小説を読む醍醐味であろう。


地名は警告する 日本の災害と地名 谷川健一
日本列島は山地がいきなり海に接して平野が少ない。急峻な河川が大部分であり、四周は海に囲まれている。こうして日本は自然災害に侵される危険な地形に満ちていて、加えて地震列島なので地名もその危険を予知するものが少なくない。

東日本大震災では宮城県名取市閖上(ゆりあげ)が津波の甚大な被害を受けた。「揺る(ゆる)」は風波が海底の砂を揺り上げて岸に押し寄せることで、閖上はそれに相応しい地名であるという。
また相模湾に面した大磯、二宮、平塚は万葉集に「相模路のよろぎの浜」と詠まれているが、「よろぎ」は「ゆる」に由来し、関東大震災では鎌倉や大磯にも津波が押し寄せ多くの死者を出したともいう。こういう事例が満載の書。


硯の中の地球を歩く 青栁貴史
著者は浅草の書道用具専門店の4代目。
硯に適した石を求めて、中国や日本の山、採石の町に足を踏み入れる。中国では山賊に襲われ、日本の山では熊を警戒しながら沢を歩く危険な旅。
硯と一緒に風呂に入る。石紋が綺麗に浮かびあがる。湯船でじっくり眺め、ゆっくりさすると硯の「ありがとう」という声が聞こえてくるという。変人の一人であろう。


影の日本史にせまる 西行から芭蕉へ 磯田道史 嵐山光三郎
『武士の家計簿』、『殿様の通信簿』を著し、NHK・TV『英雄たちの選択』をコーデイネイトする博識の歴史学者磯田道史と何が本業なのか分からない、しいて付けるなら辺境探訪家、遊湯紀行家とでも言うべき雑学の大家嵐山光三郎の対談本。

標題にあるように「影の日本史」と断るからには、西行や芭蕉は美しい芸術家ではない。彼らは権力の影で生きていた。
西行は出家するまでは上皇の親衛隊であり秘密警察、政治の中枢に直結した歌壇ジャーナリズムの寵児なのである。
一方芭蕉は江戸幕府の巡見使となる曾良と「おくのほそ道」を旅した。芭蕉の旅が諜報を兼ねていたことを否定できまい。こんな二人の対談が面白くないはずがない。


テレビ最終戦争-世界のメデイア界で何が起こっているのか- 大原通郎
業界に精通する向きには既知の内容かもしれないが、と書評にあったが、とんでもない知らないことばかり。
今や世界のメデイアビジネスの覇権はハリウッド大手スタジオやテレビ局といった旧勢力から、ITを駆使する新興勢力に移りつつあるのだそうだ。
映像ビジネスに参入したフェイスブック、アマゾン、ネットフリックス、グーグル、アップルは日本にも押し寄せ、視聴率低迷にあえぐ放送業界を追い詰めているという。
(2018.12.4)

議会改革

早稲田大学マニフェスト研究所は毎年全国自治体議会の改革度ランキングを発表している。議会が果たすべき役割を1情報共有2住民参加3議会機能強化の3項目において、その改革度合いを数値化、ランキング化するもので、このほど今年2月に実施した全国1,781自治体議会(回答率74%)の評価が発表された。
続きを読む: 議会改革

横須賀・猿島散歩

テレビの人気番組「じゅん散歩」にあやかって散歩シリーズを書く。たまには家人を誘って何処かへ出掛けなくてはいけないという義務感もあるのだが、肝心の家人はヒザが痛い、その日はコーラス、次の日は孫との約束があるなどと言って、なかなか誘いに乗ってこない。
独りで行くのなら、もっと別のところを考えるのだが、家人帯同、しかもこれまでに行ったことのない近郊となると、案外に行くべきところは少ない。
これまでにも「横浜ベイサイド散歩」、「草加宿散歩」、「青梅散歩」などはお目にとまったかもしれないが、今回はいくつかの候補の中から横須賀を選び出した。題して「横須賀・猿島散歩」。

むかしと違って、東京メトロ副都心線の開通は横須賀との距離を劇的に短縮してくれて、横浜を経由して京浜急行の横須賀中央駅までは2時間弱で到達する。
クルーズ船による「軍港めぐり」と夜の「どぶ板通り」の報告は別の機会に譲るとして、二人とも初めての「猿島散歩」を書く。

猿島
東京湾に浮かぶ唯一の自然の島で無人島。周囲1.6㎞、標高40m、横須賀の三笠公園桟橋から船で10分。
ところで諸兄は「島」の定義をご存知か。筆者も当然知らない。だから俄か知識を幾つか紹介する。

・島の定義 (国連の海洋法)次の3条件を満たすもの
❶自然に形成された陸地であること。
❷水に囲まれていること。
❸高潮時に水没しないこと。
(海上保安庁)
・満潮時に海岸線の延長距離が100m以上の陸地
(国土地理院)
・航空写真に写る陸地

ついでに
・日本全土の島の数➡6,852島(本土:5 離島:6,847)
・東京都の島の数➡330島(全国6位 1位長崎県971島)東京都・島の人口/28,000人 有人島13/伊豆諸島 小笠原諸島
・東京湾の島の数➡20島 人工島/月島 平和島 夢の島など無人島/猿島

さて猿島。鎖国時代から明治、昭和に至るまで首都防衛を担う東京湾の要塞の島であった。今でも旧軍の司令部跡や弾薬庫、砲台跡など煉瓦造りの施設が残っている。
歩くこと一時間。ただし海風に吹かれてふらりふらり散歩するするというより史跡巡りの雰囲気が漂う。
上陸した若い人たちも、あまりロマンテイックな気分にはなれそうもないが、海水浴シーズンともなれば、若者で溢れる我々世代には無縁の、釣りやBBQのメッカとしても人気の観光スポットであるらしい。
幸いこの日は快晴、島のてっぺんに立つと米海軍横須賀基地から三浦半島、房総半島まで一望できる。
大昔、日蓮上人が房総から鎌倉へ渡る途中嵐に遭い、猿に導かれて避難したという島の伝説が猿島命名の由来だという。立入禁止の日蓮洞窟もあったから多分本当のことなのだろう。
(2018.11.13)

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旧作、問題作、最新作−2018年後半の映画から

映画館で映画を見るという正しい鑑賞態度はブレることなく、今年も40本前後になりそうである。その中から後半、特に記しておきたい4作品を選び出す。


大いなる幻影 La Grande Illusion 1937仏 ジャン・ルノワール

亡友横尾一彦はフランスの三大名画に天井桟敷の人々(1944 マルセル・カルネ)、望郷(1937 ジュリアン・デユヴィヴィエ)と共にこの作品を挙げていた。それが高校生時代。
洋画の世界では、今になっても第三の男、ローマの休日などと並び称される存在であるから彼の審美眼は正しかったと言える。
その大いなる幻影を初めて見た。製作されて80年、公開されてから70年。この差は反戦映画とみなされて日本で公開されたのは、戦後の1949年であったから。この映画で知ったこと。
1) 脱走を描いた捕虜収容所映画の傑作第17捕虜収容所(1953
(ビリー・ワイルダー)、大脱走(1963 ジョン・スタージェス)の原点をなす。
2) 監督は印象派の巨匠オーギュスト・ルノワールの次男である。
3) デジタル修復版の画面が驚くほど鮮明で、作り方にも古さを感じさせない。戦争が生みだした収容所を舞台にした一大人間絵巻。主演はジャン・ギャバン。


タクシー運転手 約束は海を越えて 2017韓国 チャン・フン

韓国映画を見直した。1980年の光州事件をテーマに、外国人ジャーナリストが身分を隠して世界にニュースを発信するのを助けるタクシー運転手の職業にプライドをかけた戦い。悲劇的で暴力的なシーンも多いが、それをコミカルで人情味あふれるサスペンスタッチで描ききった。並々ならぬ監督の手腕。
残念ながら今年のアカデミー賞外国語映画賞は逸したが、その資格は充分。韓国国内では大ヒットの由。映画を見た文在寅大統領は「光州事件の真相は完全に解明されていない。これは我々が解釈すべき問題であり、私はこの映画がその助けになると信じている。」とコメントを残した。
天安門事件を想起させる中国では当然のように未公開で、この映画の存在も消し去られているそうだ。


華氏119 Fahrenheit 11/9 2018米 マイケル・ムーア

同時多発テロ事件を告発した華氏911から14年、アポ無し突撃監督マイケル・ムーアのトランプ批判最新作。
華氏911とは近未来小説『華氏451度』のパクリで、紙が自然発火する温度451度を真似て、同時多発テロの発生した9月11日を自由が燃える温度として表した。
その伝で言えば、今作華氏119はトランプ大統領の誕生した11月9日がアメリカの自由が消えた日とでも言うことであろうか。
マスコミに流されるトランプの常軌を逸した発言、行動、スキャンダルには飽き飽きしているので、少し違った角度からトランプを観察する。
●トランプを作り出したのは、これまでの米国民の行動、言動、議論でありメデイアの責任である。テレビ各局は視聴率が取れるからと、トランプの過激な言動を流している。
●この映画を見て悶絶するのは、オバマやヒラリー・クリントン
ではないか。既成の権威、既成の権益、既成の秩序、「既」に汚れた政、財、メデイアがトランプを誕生させた。
●トランプの登場なくしても、米国の病巣(白人=共和党vs非白人=民主党、 ウオールストリート+シリコンバレー(金融・IT)vsラストベルト(製造業)、1%の超富裕層vs99%の中流以下の階層)は爆発寸前であった。
●一国主義、独裁政治、右傾化は世界の潮流で、トランプの登場がこの傾向に拍車をかけた。そのうえ連日のように銃乱射事件が起き大量の犠牲者の発生が報じられる。
マイケル・ムーアはかつてボーリング・フォー・コロンバインでアメリカの銃社会の問題を告発したが、銃規制は一向に進まず、それどころかトランプは自衛策として教員に銃の携行を薦める。こんな大統領でいいのか。こんなアメリカでいいのか。
●アメリカ沿岸部の人たちはトランプをまともに相手にしようとしなかった。ところが、ニューヨークとロサンゼルスの間の地区には何千万人というトランプファンがいたのだ。民主党もマスコミもそれを見逃していた。まさかと思っていたあの男が大統領になってしまったのである。
自らの著書『トランプが勝利する5つの理由』で勝ちを予想していたマイケル・ムーアの慧眼には恐れ入るが、彼はまだ希望を失っていない。
解決策は民主党が上下両院を押さえ、古いタイプの民主党幹部が道を譲り、若い世代や女性が党内の主導権を握ることだと主張する。上下両院を民主党が押さえるという話は既に破綻したが、尊敬されなくなった米国に苛立つ米人は多い。打つ手はあろう。
次の民主党大統領候補には、前大統領夫人ミシェル・オバマやハドソン川の奇跡のパイロット、サレンバーガーの名前がチラついているという。オバマだって登場するまでは全く無名の存在だった。アメリカの懐の深さと良識に期待しよう。


ビブリア古書店の事件手帖 2018製作委員会 三島有紀子

5年前、舟を編むという広辞苑の編集者たちを描いた超真面目でためになる、その年のキネ旬2位の佳作があった。
その後の邦画では、あん 家路 聖の青春 くらいしか好みの作品は無かったが、今年に入って羊と鋼の森と本作が現れた。
祖母の遺品に漱石のサイン本を見つけた主人公が、その真贋を確かめるべく古書店を訪れる。古書店の若い女店主の名前が栞子、場所は鎌倉。本好きにはたまらない設定ではないか。
当初、本そのものには興味のなかった主人公だが、女店主との知的な会話を繰り返すうちに、次第に本を通じて文学者を知り、文学の世界に入ってゆく。全国の古本屋から本物の古書を借りて作ったというセットは、まさに神保町の古本屋の中にいるような雰囲気で、あの独特の臭いさえ漂ってくる。
本と本の隙間から見せる栞子が静かに本をよんでいるショットはことに美しい。「事件」という程のことは無い事件は発生するのだが、これはおまけみたいなもの。読書、文学、図書館、古本屋、これらに興味のないムキには退屈かも知れないが、その気のある人にはもう堪えられない佳作。ぜひご覧あれ。
(2018.11.20)