入院見舞い

 小4の夏休みに入ってすぐ、担任のW先生が盲腸炎で入院しました。級友とお見舞に行くと先生は土気色というか少し青味のある大豆色の顔で「傷口がなかなか、くっつかないんだよ」と弱々しく笑いました。でがけにお母ちゃんが「盲腸なんて10日もあれば退院できるよ」と言ったけれど退院の目処は立ちませんでした。看護婦さんが「栄養失調で傷の回復が遅いの、体力がないのよ」と耳打ちしてくれました。

 お母ちゃんはお見舞いにと笹橋近くにある吉井玉子屋で、赤玉と呼ぶ玉子を選びました。病気見舞いには精力が付くと白い玉子より赤玉子は何より喜ばれました。
 いつもは菓子箱に籾がらを敷き玉子を守ったのですが、お母ちゃんはとても貴重だったお米を敷き、玉子と玉子の隙間をお米で埋めていました。
 前年の臨海学校でも米不足で生徒各々、二合のお米を持っての参加でした。旅館側の条件だったそうです。W先生と付き添いのおばさんはお母ちゃんの気遣いを喜んで、おばさんは「こんな結構な見舞い、坊っちゃんとこはお大尽様かい?」と言われましたが、僕ん家も普通に貧乏だからお母ちゃんもきっと無理したんだと思い、お母ちゃんは「心大尽」なんだと嬉しくなりました。
 先生は夏休み中入院し、赤玉の効果だったのでしょうか二学期の始業式には出て来られました。しかし傷は完全に塞がってはいないとのことでした。塞がらない傷ぐちがどんなものか見たいと思いましたが「見せて下さい」とは誰もいいだせませんでした。その後、先生は急におじいさんの様になり声も小さく優しくなりました。特に女の子達と勉強の出来る奴にだけにでしたが……

カストリ書房で、8/4(日)13:00〜、15:00〜2回の紙芝居の上演です。
カストリ書房
〒111-0031 東京都台東区千束4丁目39−3
http://kastoribookstore.blogspot.com/

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