3・11事故から8年

 福島事故後、全基運転停止中であった日本の原発は、再稼働9基、新規制基準審査中12基、廃炉20基の現状にある。
 民意は圧倒的に「原発ゼロ社会の実現」にあると思うのだが、安倍政権は原発を重要な基幹電源に位置づけ、10年後総発電量の20~22%を目指すとして、なし崩し的に再稼働を進めている。
放射線廃棄物や汚染水の処理方法も、処分場の見通しも立たないまま、再稼働を進めるのは無責任極まりない犯罪的行為と言えるのではないか。
いま福島第一原発の構内には汚染水で満タンの一基1,000トンのタンクが950基林立している。そしてこれらは早晩海洋放出する以外には敷地内に保管場所を確保する方法がないとも言われている。
地元漁連の反発は必至で、彼らにとっては死ねと言うに等しい。東電は「自分たちだけでは決められない」と言うだろうし、国は専門家による委員会に検討を任せて逃げるに違いない。
安倍政権は、福島事故はアンダーコントロールされている、もう福島を忘れて国民こぞってオリンピックに邁進しようと掛け声をかけている。オリンピック批判などしようものなら非国民扱いされかねない雰囲気が漂い始めた。
しかし帰還困難区域は未解除のままだし、解除された市町村においても戻る住民は少なく、極端な人口減少と高齢化が進行している。

 福島では復興の美名のもとに、近い将来必ず不要になりそうな公共施設の建設だけが進む。またしても潤うのは土建業者とゼネコン。
 そして一層深刻なのは、賠償問題による地域社会の分断と人間関係の破壊である。
民主主義国家においては、チェルノブイリのような強制的な手段は取れないまでも、事故の有無は別にして、何十年も前から予測されていた東北の過疎と人口減少、高齢化を前提にした国づくり、町づくりのマスタープランは無かったのだろうか。目先の対処療法だけで人間のココロが戻るとは思えない。
我々にできることは何か。3・11周辺に企画された幾つかの講演会。

福島の復興を考える
北村俊郎氏 元日本原子力発電理事
2019.3.19 頼れる大人の会
北村氏は日本原子力発電(株)で役員を務め、40年以上にわたり、いわば原子力村に身を置いた人だが、福島県富岡町に構えた自宅で被災した。業界の中枢を知り、今は避難生活中という稀有なキャリアに注目が集まった。

子どものガンが増えている?  
布施幸彦氏 ふくしま共同診療所長
2019.3.16 ひまわりの会
布施氏はボランテイア医師として、特に甲状腺検査などの医療活動を続けている。チェルノブイリ原発事故は小児甲状腺がんを多発した。福島では? 診療の詳細や治療実態が公開されない中で、過剰診断、過剰治療の声とも闘う。福島事故を過小評価し、オリンピックに血道を挙げる安倍政権を痛烈に批判する。

福島第一原子力発電所(1F)の現状と課題
小野明氏 1F廃炉推進カンパニー社長
2019.1.17 福島原発行動隊院内集会
小野氏は現役の東電役員、講演は立場上歯切れの悪いものにならざるを得ない。話しは昨秋開設された「廃炉資料館」にも及んだが、すでに見学した仲間は、破壊され無秩序になった事故現場の状況や、汚さ、怖さ、絶望などが感じ取れず、展示技術のデモストレーションに終始していると酷評している。福島の現状は聞けば聞くほど絶望的な気分になる。
(2019.3.26)

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