図書館と文庫本

かねて「文庫は出版社の収益の柱。図書館での文庫の貸し出しをやめて欲しい。」という大手出版社社長の主張の是非を論じようと考えていた。しかしこれに関する肯定派、否定派の熱心な意見を知る内に自分の論拠のいい加減さと曖昧さに気づき、ここはまず出版不況と図書館の関係から論ずべきだと思い至った。
だがここまで広げるのは更に自分の手に余る、と気づくのにも左程時間はかからず、残念ながらこのテーマからは撤退することにした。しかし折角書いてみようと思ったのは事実だし、締め切りも迫るので、今週は最近読んだ小説を紹介してお茶を濁す。


ハードボイルド『それまでの明日』原尞(早川書房)
寡聞にしてこの作家を知らなかった。書評に触発されて私立探偵沢崎ものを初めて読む。『依頼人の望月晧一に会ったのはその日が最初だった。そしてそれが最後になった』。レイモンド・チャンドラーのフイリップ・マーロウものとそっくり。その筈で、原尞はチャンドラーを師と仰いでいるのだそうだ。
これまでの沢崎シリーズは『そして夜は甦る』、『さらば長き眠り』など。チャンドラーの『大いなる眠り』、『長いお別れ』と題名まで何と似ていることか。


企業小説『果つる底なき』池井戸潤(講談社文庫)
テレビドラマ化された『下町ロケット』、『陸王』の原作者として興味を持っていた。企業小説、経済小説のジャンルは現役時代、城山三郎、高杉良を読み漁ったが、退役後はとんとご無沙汰していたので久しぶり。
江戸川乱歩賞を受賞した初期の『果つる底なき』と吉川英治文学賞の『鉄の骨』を文庫本で読む。後者は朝霞図書館で借りた。
文庫を図書館で借りる初めてのケース。文庫化されて5、6年か、これまでに何人の手にわたったかは知らないが、紙がヨレヨレの上に薄汚く不潔。分厚い本なので読むのに数日を要したが、その間何度手を洗ったことか。なにかをつまみながら読むといった気には到底なれなかった。文庫本を図書館に置くことの反証にはならないが、今後文庫を図書館で借りる気にはなれない。
(2018.6.12)

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