ミュージカルと西部劇の復権なるか

ハリウッド映画からミュージカルと西部劇が消えて久しい。
前者は舞台の映画化権が高すぎて映画会社が興業的に自信を持てなくなったこと、後者はインデイアンを虫けらのように射ち殺すことにアメリカ人が疑問を抱くようになって、西部劇というジャンルが成立しなくなったことによる。こんな状況が長く続いた中で久しぶりに気合の入った二作が公開された。


「ラ・ラ・ランド」 LA LA LAND 2016米制作 監督 デイミアン・チャゼル

アカデミー賞の本命、もう一度観たくなる面白さ! の惹句につられたが、劇場を出る時、思わず“たのしさも中くらいなりラ・ラ・ランド”と言う駄句を思いついた。
誇大広告には文句のつけようもないが、配給会社のプレスシートそのままを受け売りするような評論家諸氏には呆れる。この映画のどこを高く評価するのか。
ミュージカルの過去の名作『ウエスト・サイド物語』には人種問題が、『雨に唄えば』にはトーキー初期の悲喜劇が、『サウンド・オブ・ミュージック』にはナチスから逃れる家族が描かれていて、それぞれに強いメッセージがあった。
しかるにこの作品には主張がない。しかも曲も歌もダンスも中途半端で、じっくり聴かせる、見せる部分が少ない。あえて良かったところを探せば、長いエンドロールのバックで演奏されるジャズくらいか。
唯一の収穫は、場末のバーでピアノを弾く主人公にマネージャーが発する“YOU ARE FIRED!”(お前はクビだ)のセリフ。
トランプ大統領得意のセリフの使い方がよく分かった。


「マグニフィセント・セブン」 The Magnificent Seven 2016米制作 監督 アントワン・フークア

映画史上、西部劇のベスト3は『駅馬車』(1939年)、『荒野の決闘』(1946年)、『シェーン』(1953年)ということになっている。
いずれも半世紀以上も前の作品で、その後亜流や二番煎じは出たが、正統派西部劇の復活は無かった。
ところがこの『マグニフィセント・セブン』はかなりいいセンを行っている。
黒澤の『七人の侍』、それをメキシコに置き換えた『荒野の七人』という名作二本を原案にしたというから骨格がしっかりしている。
賞金稼ぎ、ギャンブラー、流れ者、ガンの達人など、雇われたアウトロー七人は金のために町を守るはずだったが、いつしか目的が金ではなく正義になってゆく・・・。
ストーリーは類型的で目新しさに乏しいが、この作品には腰を据えて作り上げた重量感がある。むろん七人は滅法強いし、彼らの持つ武器にも特徴がある。しかし作り方は正攻法で画面にスリルと緊張感が漲る。
とりわけ七人がライフルを構えて並んで歩くシーンは『OK牧場の決闘』を彷彿させるし、ライフルを投げる、腰だめで連射する、一瞬のうちに敵を倒すシーンは、『リオ・ブラボー』の快感を思い出させる。
個人プレーあり、連携プレーありでゲームを見るようなワクワク感に溢れる。
ということでこの作品を稀な正統派西部劇として高く評価する。
田谷英浩(2017.3.6)

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