天皇の退位

古い本を読み返していたら、こんな記述に出くわした。昭和天皇ご在世中に耳にしたうわさ話であるが、と断ったうえで、
『学習院の同窓会に出席された明仁皇太子(当時)がいまや一流企業で社長や重役になっているクラスメートの前で、実に洒落たスピーチをなさった。【みなさんが、うらやましい。わたくしは、まだ就職もしていません】と』。
いまならさしずめこうおっしゃるかもしれない。【みなさんが、うらやましい。わたくしは、まだ辞められません。】

昨年8月、生前退位の願いを強くにじませた「お気持ち」の表明いらい象徴天皇のありようが広く議論され始めた。
国民一般はあまり深く考えることもなく、被災地を訪れ被災者を激励する姿、戦争の傷跡の残る激戦地に慰霊の旅を続ける姿を見て、有難いお務めをして頂いていると受け取る反面、ご高齢でお気の毒、そろそろ引退されて皇太子に譲ったらいいのにと素朴に考えているのも事実である。
しかしどうやら「生前退位」はそんな情緒的な判断を許さない憲法の世界に踏み込む厄介な問題のようである。

報道されているごとく、「天皇の公務の負担軽減に関する有識者会議」は、今の天皇陛下に限って生前退位を可能とする特別措置法の検討に入っているようであるが、これを憲法違反で邪道とする強い反対論もある。
憲法第2条は「皇位は世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する」とある。
つまり天皇の退位は皇室典範の改正によってのみ可能なのであって、特例法その他の法律による対応は明白な憲法違反であるとする説である。
最終的にどんな結論が導き出されるかは知る由もないが、いまや一代限りの特例法を主張する政府・自民党と皇室典範の改正以外にないとする民進党との対立点、隔たりは大きい。
皇族の減少、高齢化の中で、数年前には女性宮家の創設や女系天皇についても検討されていたように思うが、82歳の天皇が自ら指摘するまで、政治が何も対応してこなかったとすれば、これは政治の不作為と言えるのではないか。     (2017.2.12)

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