嫌な感じ

今年のカレンダーも残り2枚になった。年々歳々、月日の経つスピードに驚くが、今年の速さはまた格別である。年齢を時速に置き換えると時の経つ速度を体感できる、という説を信ずるならば、今は毎日時速78㎞で走っているのだから、これは一般道ではなく、まさに高速道路を疾走しているに等しい。
そんな感覚で今年の10か月を振り返ると、年末の重大ニュースにランクされそうな事件や事故もあっという間に記憶の彼方に過ぎ去り、今やトランプ対ヒラリーの中傷合戦と小池百合子の動静にのみ関心が集まるという異常事態である。
これではいけない!マスコミを骨抜きにし、マインドコントロールで国民に難しいことを考えさせない現政権の思うつぼではないか!なんとなくイヤーな感じの昨今である。

白紙の領収書 富山市議会における政務活動費の不正取得問題は次元が低すぎて笑うしかなかったが、国会議員や大臣レベルにおいても一部慣例化しているとなると事態は深刻である。
支払った側が金額を記入したものを領収書と呼べるなら、正常な社会常識は覆る。法律上の問題は無いとする主張にも唖然とする。

豊洲市場の地下空間 「盛り土(もりつち)」を「もりど」と発音することからして気に入らなかったが、事態は歴代の都幹部の責任問題にまで発展した。「いつ 誰が」あるはずの盛り土を、なしの空間に替えたのか。自惚れと自信過剰の石原慎太郎が突然“記憶にない”を連発するぼけ老人を演じ始めたのは滑稽で見苦しい。人間、ああはなりたくない。

もんじゅと核燃料サイクル 数年前まで、新大阪-天橋立間に「文殊」という名の特急列車が走っていた。列車名は天橋立にある文殊堂とそこに安置されている本尊「文殊菩薩」に由来している。

ところで国費1兆円超を費やした上に廃炉やむなしとされる高速増殖原型炉に「もんじゅ」という有難い名を付けたのは誰か?
福井県の曹洞宗永平寺が命名に関わったとする説もあるようだが事実は分からない。
凡人の理解を超えるが、「夢の原子炉」ともてはやされ、人類の幸福に必ず役立つと信じた動燃幹部が仏教界に相談して名付けたというあたりが正解かもしれない。
いま「もんじゅ」は廃炉の瀬戸際にある。しかし政府は「廃炉を含めて見直す」ための高速炉開発会議を設けるという。こんな物騒なものをいつまで維持しようとするのか。

11・3文化の日を明治の日に? 右寄り安倍政権の体質を露骨に現す動きが表面化している。明治天皇の誕生日「明治節」だった11月3日を「文化の日」から「明治の日」に変えようとする動きである。これを推進する協議会のメンバーに桜井よしこの名が見えるのもイヤーな感じである。
「文化の日」は1946年11月3日の憲法公布を受けて制定された。当時の国会審議では、この日は戦争放棄を宣言した重大な日であるから、「自由と平和を愛し文化を進める日に決めた」と説明されている。
ところが日本の近現代史もロクに知らないような今の議員連中が「神武天皇の偉業に立ち戻り、日本のよき伝統を守りながら改革を進めるのが明治維新の精神だった(稲田明美)」などと妙なことを言い始めた。

黒田日銀 目標断念 難しいことはよく分からないが、黒田総裁は物価上昇率2年で2% と威勢よく宣言して就任したものの、どうやら達成不能と白旗をあげたらしい。
総裁は物価の上がらない原因をあれこれ言っているようだが、気に入らないのは目標達成できないことと、自分の任期に特別な関係はないと発言していることである。三年半前、異次元緩和と称し、ケタ外れの金融緩和に踏み切り当初から副作用の大きさも予想されていた。アベノミクスの重要部分を担っておきながら、責任はおろか反省もないのははなはだ面白くない。上がこうでは下は乱れる。

大隅博士の鳴らす警鐘 朝日歌壇にこんなのがあった。『日本国は基礎研究にカネ出さず「受賞」は国の手柄のように』ノーベル医学生理学賞を受賞した大隅良典さんのコメントが心に響く。
・日本の大学の基礎体力が低下しているのは深刻な問題で、研究費の多くが競争的資金になると、長期的な研究が困難になる。
・今後新しい研究分野で日本人がノーベル賞を受賞するのは非常に難しくなっている。
『誰もやらない研究がおもしろい とノーベル賞の大隅博士』

さて今年もあと2か月、米国の大統領選挙、英国のEU離脱、北朝鮮の暴発、世界的な気候変動、心配の種は尽きない。
田谷英浩(2016.11.1)

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