「テレビはもういらない」のか

活字メデイアの危機が叫ばれ、インターネットの進展からテレビはもういらないとの声も聞こえてくる。タレントを集めてバカ騒ぎ、同工異曲の旅番組、仲間には同時性のあるスポーツ番組以外は見ないと言う人もいる。
しかしそうは言っても、家に帰るととりあえずテレビをつける、ただ何となくテレビを見ているという人が圧倒的に多く、テレビが「日常」のものになっていることは否定できない。
テレビが日常化し、空気や水と同じように当たり前のものとして存在しているということは、テレビの発信する文化やメッセージがじわじわ浸透し、日本人ひとりひとりの精神構造に影響を与え続けていることは論を待たない。

そこで心配になるのは、マスコミにまで影響力を行使し始めた現安倍政権の右寄りスタンスである。大手新聞社もテレビ各局も情けないことに、一強安倍政権の顔色を窺い、その意向を忖度して、いまや権力監視というジャーナリズム本来の役割を放棄しつつあるように思える。政治権力の抱える問題や病理に切り込む良質な討論番組、ドキュメンタリーが少なくなったように思えるのは気のせいか。
そんな矢先、NHKの報道番組「クローズアップ現代」の国谷裕子氏、テレビ朝日「報道ステーション」の古館伊知郎氏、TBS「NEWS23 」の岸井成格氏が相次いで降板するというニュースが流れた。官邸の意向を反映したものなのか、春の番組編成時の定期異動なのかは知らないが、比較的辛口、本音スタイルでモノを言っていたように思えるので、これも政権圧力かと勘繰りたくなる。まさか櫻井よしこが次のキャスターに登場することはあるまいが。
そういえばビートたけしの「TVタックル」も田原総一朗の「朝まで生テレビ」も以前と比べるとテーマも切り口も甘く、かつての鋭さはない。これも「テレビがつまらなくなった」と言われるひとつかもしれない。

さて明るい話題も書いておこう。
昨秋、久しぶりに次週の放映が待ち遠しいテレビドラマが登場した。池井戸潤原作の『下町ロケット』である。ロケットエンジンの重要部品バルブシステムの開発を軸に、三菱重工を思わせる巨大企業や都市銀行、ライバル企業との確執を中小企業の視点から丁寧にドラマ化した。
非常な高視聴率を稼いだそうだが、成功の要因は大企業も頭をさげる町工場の心意気と技術開発力や製造加工技術を爽やかな男のドラマに仕立て挙げたこと。そして悪代官(大企業)を最期にはやっつける町民(町工場)のような、水戸黄門スタイルの勧善懲悪劇に中高年男性はしびれた。
現に日頃はテレビなんて、と軽蔑の眼差しの仲間もこの番組は良く見ていたようだ。大手企業の横暴な振舞い、派閥争い、非常時に役に立たない銀行の融資態度、ライバル企業の接待攻勢、部下の信頼と裏切りなど、現役もOBもサラリーマンなら一度や二度は経験したことばかり。そうだそうだと頷き、許せねえ!と喚く。
ことに技術開発部長山崎を演じた安田顕という役者の作業服姿は、大田区の町工場の何処にもいそうな、まさにはまり役で非常な親近感を覚えた。
TBSはかつて“ドラマのTBS”と言われた。こんな上質のドラマを今でも作れるのなら、次には『下町ボブスレー』や深海探査機『江戸っ子一号』をテーマに、次週が待ち遠しくなるドラマを作ってもらいたい。
竜頭蛇尾になったテレビ論はこれでお終いとする。(2016.1.20)

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