2015年の映画から

芸術映画も商業映画も、良心的なドキュメンタリーもCGと音響で観客を驚かすスペクタクルも、今年は35作品を見た。
記憶に残る作品に短いコメントを付す。


ジミー、野を駆ける伝説 Jimmys hall 名匠と呼ぶに相応しいケン・ローチのアイルランド物語。スクリーンに爽やかな風が流れる。


イミテーション・ゲーム The Imitation Game ドイツ軍の暗号<エニグマ>解読に挑んだ英数学者の戦い。全編に漂う緊張感は3年前の『アルゴ』に匹敵する。


セッション Whiplash 狂気のドラム・レッスン。アカデミー助演男優賞のJKシモンズのやり過ぎとも思える鬼気迫る演技。


ナイトクロラー Night Crawler 夜のロスの街に事件、事故を求めて走り廻るパパラッチ。TV局向けに扇情的な事故映像を作ることすらする。狂ったアメリカ社会の一面。


ジュラシック・ワールド Jurassic World 『スター・ウオーズ』、『マッドマックス』の類に興味はないが、1993年の『ジュラシック・パーク』には大いに驚き興奮した。あれから22年、恐竜はまるで本物のようだし、テーマパークに人が溢れる臨場感は作り物とは思えない。メガヒットを狙う娯楽大作とはこれを言うのか。


裁かれるは善人のみ Leviathan ロシア北部の荒れ果てた町を舞台にした政治批判劇。北極圏で撮影された映像は美しいが、正義は最後まで勝利しない。


ローマに消えた男 Viva la Liberta 支持率低迷に悩む伊・最大野党党首、非難は優柔不断な彼の言動にも及ぶ。救ったのは替え玉になったそっくりの双子の兄。鋭い弁舌、頭の切れ、党の支持率は急上昇する。トニ・セルヴィッロという役者が二役演ずるしゃれた喜劇。


黄金のアデーレ 名画の帰還 Woman in Gold ナチスに略奪された伯母アデーレの肖像画の返還を求め、オーストリア政府を訴えた女性マリアの実話。画家グスタフ・クリムトが1907年に描いた作品は正式名称「アデーレ・ブロッホバウアーの肖像Ⅰ」と呼ばれ、いま世界で最も高額な絵画トップ10に入るという。
映画はマリアの生きた過去と現在を交錯させて描く。ウイーンの黄金時代、ヒトラーのオーストリア併合、ユダヤ人迫害、第二次大戦の開戦と終結。駆け出し弁護士の奮闘も好ましく、爽やかな後味の佳作である。


天皇と軍隊 Le Japon lEmpereur et lArmee  戦後70年の今年、第二次大戦を扱った映画が沢山公開された。『日本のいちばん長い日』や『この国の空』が代表作のようだが、かつての市川崑の『野火』(1958年)、小林正樹の『人間の条件』(1959~61)には及ぶまい。で、フランス製のドキュメンタリー映画『天皇と軍隊』を見たのだが、これにはショックを受けた。

終戦後2年、広島に巡行した天皇は原爆ドームと2万人の市民の前に立ち、手を振りヒョイヒョイと帽子を掲げる。広場を埋め尽くす群衆からは、一瞬の躊躇ののち(そう見えた)、万歳の声が上がる。英・王立戦争博物館から入手したという映像に衝撃を受ける。生き残った広島市民は原爆投下を肯定したのだろうか。天皇はやはり神だったのか。

崩御前の記者会見。原爆投下の是非を問われて天皇は答える。「戦争というものは……、それも仕方のないことです。」

敗戦を経て日本国憲法が誕生し、大元帥だった昭和天皇は背広の象徴天皇に変わった。マッカーサーは天皇の戦争責任論を退けたが、アジアの視線は今でも厳しい。軍部の暴走はあったにせよあの戦争が天皇の名のもとに行われたことに疑問の余地はない。
いま、戦後生まれに戦争責任はあるのかという新たな論点が生まれたが、それを歓迎するかのような、不見識な右寄り学者がいるのにも驚く。「国家は連続性のある存在である。歴史事件に対しては謝罪すべきである。」(歴史学者 豪テッサ・モーリス教授)
海外での武力行使に道を開こうと躍起な安倍政権に対し、二度と戦争はしてはいけない、平和憲法を守ると強く念じているのは、現在の天皇、皇后であるように見受けられる。
8月の戦没者追悼式においても天皇は「深い反省」を述べ、安倍晋三は「加害責任」への言及を避けた。
骨抜きにされたマスコミ、メデイアは自ら主張することなく、歯止めを託すかのように、天皇の発言を取り上げる。「今年は様々な面で先の戦争のことを考え過ごした一年」であり「先の戦争のことを充分に知り、考えを深めて行くことが日本の将来にとって極めて大切なことと思います」と。

しかしこれは非常に危険な状態ではあるまいか。“天皇の名において…”、これでは往時と一緒である。
間もなく新年、イスラム問題を抱える西洋諸国も、アメリカ追随の日本も、来年が更に危険な年にならないよう祈りたい。(2015.12.27)

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