いささか無責任な朝日の社説

11月19日、「赤字の鉄路 地域の知恵で足守れ」という聊か無責任な社説が掲載された。廃止が予想されるJR三江線を論じているのだが、高齢者に一般人と同じ土俵で相撲をとれと言っているようなもので少々酷である。
「地元はとにかく存続をと訴えるだけでなく、地域に必要な足は自分たちで守るという意識が大事である。」と宣うが、地域で守れなくなったからこそ問題が顕在化しているのではなかろうか。
人口減少、高齢化社会、極端な過疎化の進む地方において、鉄道事業はどうあるべきか、公共交通はどうあるべきか、国全体で考える必要のある重要課題である。

(石見川本駅に停車中の列車)

「三江線」も多分その昔、我田引鉄で建設された路線であろう。それが誰かは知らないが、1975年に全線が開業した頃には、既に車社会に入っていて、利用はもっぱら通学の高校生が主体になっていた。現在ではJR全路線中、輸送密度最下位の路線になっている。それを地域の知恵で守れ は酷というほかない。

JRの全線に乗っているので、むろんこの線にも乗った記録は残っている。しかし名所、旧跡、観光地といったものに縁遠い「三江線」には、車窓をしかと眺めた記憶がない。
だいたい「三江線」と聞いてどのあたりの線か見当のつく人は少ないだろう。であるから少しデータを提供し、いかに地域の知恵だけでは足を守ることが難しいかを証明する。


「三江線」は島根県江津市と広島県三次市を結ぶ路線延長108.1㎞、全線非電化のいわゆるローカル線である。中国地方最大の川「江の川」に沿って長い期間をかけて建設されたが、全通した頃にはモータリゼーションの時代に入っていて、利用は地域住民の移動需要のみであった。
現在の主な沿線自治体の人口は、
江津市 24,700人
三次市 54,700人
川本町  3,500人
三郷町  4,800人
邑南町 11,000人 とされ、おおよそ10万人。我が朝霞市一市に及ばない。
乗客がいないから運転本数が減る、本数が少ないから鉄道に乗らない。悪循環も重なって、現在江津→三次間を直通する列車は日に三本。それも6時発、15時発、16時30分発。これで3時間半かかる。これでは乗る人も稀になる。
これまでは沿線の代替輸送道路が未整備ということで廃止対象から除外されてきたが、最近では、江津道路(17.6㎞)、浜田自動車道(55.3㎞)、中国自動車道(37㎞)を経由すれば、江津から三次まではおよそ110㎞、一時間半で移動できるようになった。もはや鉄道に勝ちみはない。
残るは江の川に張り付く村々の移動需要であるが、現在の三江線ダイヤを見る限り、沿線住民はすでに鉄道を当てにしていない。

都市近郊の鉄道復権、とりわけ路面電車の見直しが公共交通の今後のあり方としてテーマに上っているが、あくまで大都市近郊の話しである。鉄道が地域のシンボルの時代は終わった。東日本大震災を機にBRT(バス)で復興の足掛かりとしている地方も多い。

鉄分が人一倍濃い人間が言うのも妙だが、赤錆びたレールが放置されたままの廃線跡を見るのは辛い。バスでもいい、予約制の乗合タクシーでもいい。要はその地方の現状にあった公共交通のあり方を自治体が先頭に立って考え、国はそれを支援すべし。
地方創生とか地方再生とか、うまい言葉やまやかしの日本語は要らない。われわれは今現に起きていることを共に考えるべきである。(2015.11.20)

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ぶらり三江線Map1
ぶらり三江線Map2
ぶらり三江線Map3

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