観劇二作

映画なら玄人はだしを自負しているが芝居についてはまったくの素人。語るべきことがなかったが、ここにきて若手演劇人の二作品を観る機会に恵まれた。いずれも社会性に富み現代日本が抱える深刻な問題を告発する骨太な物語である。


そぞろの民 トラッシュマスターズ 中津留章仁作・演出 下北沢駅前劇場
安保関連法案が強行採決されたテレビ中継を見た直後、老人施設を抜けだしていたある平和学者が自宅で自殺した。
動機の究明と死に追いやった責任をめぐる三人の息子の争いは政治やジャーナリズムの問題、都会人の偽善性をあぶりだす。
そして老いがもたらす孤独と疎外感、老人の子供たちへの痛切な思いが次第に明らかにされる。歴史や政治を語るセリフはやや生硬で聞き飽きたフレーズも多いが、超高齢化社会が直面する家族問題、老人問題が容赦なく突き付けられて観客は身じろぎできない。
1973年生まれの中津留章仁は大震災発生後わずかひと月で『黄色い叫び』という原発を告発する青春群像劇を発表して観る者を驚かせた。この将来を嘱望される若手演出家は今回も100席とはいえ平日の小劇場を重たいテーマで満席にした。


地を渡る舟「1945/アチック・ミューゼアムと記述者たち」てがみ座 長田育恵脚本・扇田拓也演出 東京芸術劇場シアターイースト
旅する巨人、民俗学者宮本常一と渋沢栄一の孫でパトロンの渋沢敬三の物語である。アチック・ミューゼアム(Attic Museum)とは渋沢邸の物置部屋の屋根裏に作った民俗学研究所のことで、動植物の標本や化石に溢れ、学問の支援者としての渋沢敬三のもう一つの顔を印すものである。
脚本の長田、演出の扇田、ともに1970年代後半の生まれの若手、彼らは言う。「震災直後、たとえ一瞬でも日本人の一人一人がこの国の未来を考えようとした。あれから三年、私たちはいま“新しい戦前”を生きている。常一が記録し続けた日本を私たちは確かに手渡されたはずなのに、いつしかそれを壊し葬ろうとしている。」止め処なく右傾化する日本…。若い演劇人の危機感に触れた。                    (2015.11.1)

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