「いま」を考えさせる洋画二作品

高齢社会の到来と認知症の恐怖、刺激的な映像を求める視聴者と視聴率争いに明け暮れるテレビ局、「いま」を考えさせられる対照的なアメリカ映画二作品を見る。

アリスのままで


アリスのままで Still ALICE
2014 米 監督リチャード・グラツァー、ウオッシュ・ウエストモアランド
ニューヨークのコロンビア大学で教壇に立つ50歳の言語学者アリス、家族に恵まれ学生たちからも慕われてまさに円熟期。
ところが講義中に言葉が思い出せなくなったり、ジョギング中に自宅までの道が分からなくなるという事態が起き始めた。
やがて若年性アルツハイマー症と診断され、アリスの記憶や知識は日々に薄れてゆく。
夫婦ともに大学教授、二人の娘も真っ当な生き方をしている恵まれた家庭環境という設定で、これによる家庭崩壊の悲劇は予感できない。
ただしこれは他人事ではない。いつ自分に起こっても不思議ではない。われわれの周囲は予備軍だらけである。
先年のフランス映画『愛、アムール』のような深刻さはないが、楽しく見られる映画ではない。しかし非常によくできた作品で高く評価したい。
アリス役のジュリアン・ムーアは大仰に演じることなく今年のアカデミー賞の主演女優賞を受賞した。気の毒なのは共同監督のリチャード・グラツアー、製作当時すでに筋委縮性側索硬化症という難病を患っていたそうだが、病床でアカデミー賞の授賞式を見届けた2時間後に63歳で旅だったという。

ナイトクローサー


ナイトクローラー Nightcrawler
2014 米 監督ダン・ギルロイ
ナイトクローラー、語感からも怪しげな雰囲気が漂う。英和辞典を引くと「夜間に這い回る大ミミズ」とあり薄気味悪い。
主人公ルイスは窃盗を重ねるチンピラだったが、たまたまテレビ局に扇情的な映像を売りつけるパパラッチという仕事があるのを知った。盗んだ自転車を金に替えた彼はカメラ機材を買い込んで、夜のロサンゼルスの街に事件を求めて徘徊し始める。
同業者との先陣争いに勝った彼は映像をテレビ局に言い値で売りつける。局側も視聴率競争に勝つためには次々と刺激的な映像を彼らに求める。
そして遂には同業者の車を細工して事故を起こさせ、その凄惨な状況をスクープするまでにエスカレートする。
ルイスにもテレビ局にももはやモラルは無い。
普通ここまでやると主役は事故死するか、社会的制裁を受けて、挫折し破滅するのだが、この映画の主人公はちがう。そんな柔ではない。それまでの個人営業を止めて、社員を雇いプロダクションを立ち上げる。狂ったアメリカの一面。
彼らは今夜も事件、事故を求めてロスの高速道、市街地を猛スピードで走りまわっている。         (2015.9.1)

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