納涼特別 ~趣味の世界アラカルト~

毎週1,000字を書き続けて間もなく20年、推敲・編集して「自分史」として本にしては、との有難い声もあるが、自己満足以外の何物でもない気がして踏み切れない。
そこへ石塚幸治さんというグラフィック・デザイナーが現れた。朝霞出身、いまは品川在住の58歳で、地域活動を通じて知りあった。この人の手にかかると下手な駄文も「コラム」として輝きを放ち始め、間もなく二年になる。
毎週火曜日、ネット上に更新されることになったため、今までは気儘に書いていた原稿に「締め切り」という概念が生まれた。そのうえ公開を前提にするので、仮に政治家や官僚に悪罵を浴びせるにしても、一定の抑制が必要で、最近些か歯切れの悪い文章になったような気もする。
「締め切り」と「表現力」、二つの足枷に縛られながら、今週は夏休み納涼特別と銘打って、趣味の世界を駆け足で総浚いする。

上野東京ライン開業4か月
上野駅止まりだった東北、常磐線が東京駅以南に直通する、東京駅止まりだった東海道線が上野駅以北へ直通する。
首都圏の交通体系が画期的に変わって4か月、予想通り日本で最も混雑していた上野-御徒町間の混雑率が大幅に減少したほか、埼玉県、茨城県からの通勤客の都心への到達時間が短縮された。サラリーマン、OLにとって朝の10分、15分はとても貴重である。
この目で確かめるべく、赤羽駅から南行の電車に乗り、上野、東京を通過し品川駅まで行く。品川駅からは北行の電車で東京、上野での乗客の行動を観察する。これを朝と夕方、昼間にも二、三度やってみた。鉄道ファンとしてはこれくらいはやらないと説得力に欠ける。
相互乗り入れにより、何処か遠くで起きたトラブルが広範囲に広がるというデメリットもあるが、メリットの大きさに比べれば、我慢の範囲であろう。
ただ仕事帰りのサラリーマンにとって、これまで上野駅、東京駅でそれぞれの始発電車に乗れば座って帰れたのに、通過駅となってしまった両駅で座るチャンスが減ったのは辛い。茅ヶ崎や平塚に帰るのに東京駅で座れない、熊谷や深谷へ帰る人が上野駅で座れないと言うのは確かに辛い。しかしこれらの人たちも、やがて何両目の何処に乗れば、どの駅で座れるかを発見し、それぞれの通勤スタイルを確立してゆく。長年の経験がそう教えてくれる。

地図を見るのか読むのか
本格派の鉄道ファンにとって、時刻表は見るものでなく、読むものである。当然地図も見るものでなく、読むものと思っている。
地図入門
地図入門(今尾恵介著)が面白い。
常磐線の佐貫駅には「当駅はマザー牧場の最寄り駅ではありません」の貼り紙があるという。内房線の佐貫町駅へ行くべきところを間違える若い二人連れが多いらしい。
上毛電鉄(群馬県)の富士山下駅には富士山の山麓と勘違いして辿り着く外人観光客がいるという。いずれも地図を好い加減にする失敗である。
この本はこんな事が「まえがき」に書かれているくらいだから、専門的な前半も、後半の「地図と地名」、「地形を味わう」もめっぽう楽しく面白い。


次いで開沼博著はじめての福島学に挑戦する。著者は「福島の問題」がステレオタイプ化した「避難」「賠償」「除染」「原発」「放射線」「子供たち」の6点セットになったことを怒っている。

我々は正しいデータに基づいた福島県を本当に理解しているのだろうか。著者はのっけから「福島を知るための25の数字」を読者に問いかける。最終ページに答えは出ているのだが、恥ずかしながら半分も分からなかった。例えば福島県は農業県のイメージがあるが、一次産業従業者はどれくらいの割合か?
答えは7.6%。二次が29.2%で三次産業就業者は60%である。
ずれている福島のイメージを正しく知ることから我々は始める必要がある。

あん

映画『あん』は甘くなかった
今年の米アカデミー賞はかつてスターになったものの、その後落ちぶれた熟年男優がブロードウエイで再起を目指す『バードマン』(アレハンドロ・G・イニヤリトウ)が作品賞、監督賞などを受賞した。だがこの作品、玄人受けしたようだが、あまり楽しくない。平均的な映画ファンは狂気のドラム・レッスンを売りものにした『セッション』(デイミアン・チャゼル)をかう。
しかし限界を超えて一本立ちした若きドラマーの成功譚を期待する観客は大いに裏切られる。はじめから終わりまで全く救いのない画面に疲れ憔悴して映画館を出る。これなら『イミテーション・ゲーム』に軍配を上げる。

さて日本映画、今年も飛びつくような作品に巡り合わないが、『あん』(河瀬直美)を見る。甘いどら焼きの餡を主役にハンセン病という大きく重い主題を語る。樹木希林と永瀬正敏の二人芝居のような作品だが、福島の今に迫った昨年の『家路』の田中裕子と松山ケンイチを思い出した。きわめて良質な佳作である。

行きつけの店が減る
5年前、行きつけの小料理屋、居酒屋5軒を紹介したが、いまも変わらず通うのは、浅草の「アリゾナ」1軒のみ。呑み友達が変わったり、店の模様替えで気に入らなくなったり、都心の再開発で店そのものがなくなったりと態様は様々。その近況報告。

神楽坂九頭龍蕎麦
ここの店主はかなりのやり手で、この5年の内に新しい店を神楽坂に2軒オープンした。そのため気の利いた店員がそちらに移り、店主も今までのように愛想よく顔を出さない。酒肴は二の次、店とのコミュニケーションを大事にしてきた身には足が遠のく。

両国ちゃんこ巴潟
相撲人気の復活もあって盛況の様子、ただし加齢とともに「ちゃんこ」を食いに行こうという友人が減り、残念ながらご無沙汰。

麻布十番山忠
赤坂、麻布界隈をうろつくことをステータスと考えていた友人が次第に減り、めっきりこの方面に出かけなくなった。高級フランス料理店le Petit Tonneauの閉店が決定的。

東銀座千里浜
東銀座の再開発と共に姿を消した。新鮮な能登の魚介類が魅力だったが、その後を追跡していない。

と言うことで、現在新規開拓に大童。これから「行きつけの店」にランクインしそうなのは、渋谷の「十徳」、湯島の「岩手屋」、恵比寿の「えびす村」など。ただしいずれも大衆居酒屋で高級料理店とはいよいよ縁遠くなった。        (2015.7.25)

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