大佛次郎論壇賞

本賞は日本の政治、経済、社会、文化や国際関係などを扱った優秀な論考を顕彰することを目的に制定され、若い世代の研究者が選ばれる傾向にあると聞く。書棚には湯浅誠『反貧困』、服部龍二『日中国交正常化』、大島堅一『原発のコスト』が並んでいるが、いずれも新書版形式である。
ところが昨年受賞の遠藤典子氏『原子力損害賠償制度の研究』はA5版356頁 6,200円の堂々たるハードカバー、馴染の本屋に尋ねてもお取り寄せレベルの本でやや敷居が高い。しかし著者の週刊ダイヤモンド元副編集長という経歴、大学院の博士論文として公共政策研究の手法で問題に迫ったという切り口、そして何よりも知性と教養を感じさせる美貌の46歳という点にも興味は尽きず、初めて朝霞市立図書館に貸し出しの申し込みを行った。

さて本書は紛れもない研究書で、怠惰に過ごしている昨今の生活環境の中で、これを熟読するのは辛い。しかし何が書いてあるかは分かった。
〇原子力施設おいて大規模な事故が発生した時、その損害の賠償は誰が負担すべきか。事故原因者か、電気利用者か、原子力事業者すべてか、原子力政策を振興した国か。
〇事故が引き起こした社会的混乱をいかに収拾し破局的事態を回避すべきか。日本政府の緊急時における危機管理政策形成能力はどれほどか。政権与党の指導力は?官僚は政策的蓄積を生かしたか。
〇1961年に制定された原子力損害賠償法は事業者が無限責任を負い、国家は裁量的援助を行うという曖昧なものであった。安全神話を損なうとの配慮から、3・11まで改正は行われなかった。世界標準の「有限責任+国家補償」に比べ特異な制度であった。
〇官僚たちは当時の民主党政権の下、水俣病への支援策を作った際などの経験の蓄積を活用して、短期間に原賠法を補う支援機構制度を作り上げた。法律的整合性と経済的合理性を備えかつ政治的、社会的リアリズムからも遊離しないという制約条件を克服した。未曽有の危機において官僚機構の優秀さが発揮された
(2015.4.18)

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