やっぱり本はノンフィクションだ!

文系学部不要論が喧しい。大学を職業訓練学校にせよ、教養はいらないとする説である。文系出身としては全く同意できない。
入学後、直ちに入社試験の準備に入るような現今の風潮を間違いと思っているので、この論争に加わると、つまるところ「大学は何のためにあるのか」という壮大なテーマに行きあたる。
実学とは一見無縁な文系の教養があってこそ、自分の頭で考える人間が育つと考えるのだが、諸兄の見解はいかがであろうか。

小説を読まなくなって久しい。漱石やトルストイは学生の頃卒業し、会社人間になってからは、高杉良や城山三郎の企業小説、和久竣三の法廷ものを読み漁った。だが高度成長、バブル崩壊の過程で、我が企業は幾度も会社存立の危機に見舞われた。たまたまトップの動向を間近に見る立場にいたので、そこで行われた対親会社、銀行、労働組合などとの再建を懸けた対立、駆け引き、妥協、役員間の暗闘、派閥争いなど。こっちの方が小説などよりよほど面白く、この段階でフィクションの世界から離れた。
しかしそうは言っても書評で絶賛され、広告で煽られると心の動く小説があることも否定できない。

その女アレックス  ピエール・ルメートル
このミステリーがすごい、30万部突破。-その女が世界を震撼させる、驚愕、逆転、慟哭、そして感動-
こうまで書かれると元ミステリーファンとしては無視できない。だが後味悪く好みのタイプではなかった。全編に不潔感が漂い、悪夢に悩まされることになった。

シャドー81  ルシアン・ネイハム
後味の悪さを消し去るため、爽快感抜群のこの航空サスペンスを再読する。しかし歳を取ったのだろう。40年前興奮したこの傑作にも感興は湧かなかった。

やはり本はノンフィクションに限る!

深海8000mに挑んだ町工場  山岡淳一郎
2009年1月、東大阪市の中小企業が開発に携わった人工衛星「まいど一号」が種子島宇宙センターからH2Aロケットで打ち上げられた。当日の夕刊は“町工場の希望、宇宙へ 東大阪「不景気吹き飛ばせ」”の見出しが躍った。
本書は、“大阪が空なら、東京は海だ。負けてられねえ!”と東京下町の町工場が先頭に立ち、産官学金、四位一体となって深海無人探査機「江戸っ子一号」を誕生させたものがたり。海洋立国日本の希望を背負って歩を進め始めた。

0(ゼロ)葬 島田裕巳
“葬式は要らない。墓も要らない。”と言い残した漱石の場合でも、青山会葬場で葬儀は行われ、遺灰は雑司ヶ谷霊園に収められている。しかし80代、90代で亡くなる人が多くなった今、本当に従来のような葬儀や立派な墓が必要なのであろうか。著者は宗教学者にして、葬送の自由をすすめる会の会長。
本書はマイ自然葬(散骨)と究極のゼロ葬(火葬場で遺骨を引き取らない葬り方)を説く。以前から関西の骨壺はなぜ小さいのかと思っていたが、関東の全骨収骨に対し、関西では部分収骨なのだそうだ。残りは火葬場で処分される。
読後感は非常にいい。これなら家族の負担がうんと軽くなる。同輩必読の書である。

さまよえる町 三山喬
『ホームレス歌人のいた冬』の三山喬が副題「フクシマ曝心地の心の声を追って」を出した。前著は朝日歌壇への投稿で反響を巻き起こしたホームレスを追って、横浜のドヤ街に通い続けた体験記であった。本書も3・11以降、朝日歌壇に投稿された福島の歌人の作品から出発している。

ふるさとは無言無人の町になり地の果てのごと遠くなりたり

あれから間もなく4年、自分の土地を追われ、避難先では意外にも白眼視に遭う。被災者への補償額や生活態度が生むやっかみ。確かに日中はパチンコ、夜は歓楽街、それも連日連夜タクシーを呼ぶ。心ない一部の人の行動が住民の心を裂く。著者は3年かけて心を閉ざした人たちと会話を続ける。大新聞やテレビでは報じられないフツーの人の心。読みやすいが中味は極めて重い。

東北朝市紀行 池田進一
輪島、高山、房総・勝浦が日本三大朝市なのだそうだ。本書はこれら観光化した朝市の対極にある「市日」と呼ばれ、決まった日付の日だけ立つ市を東北に20年間取材した写真集でもある。

“ばっちゃんおはようなんす”
“何かこうでぐだあ~”
“ここさ座ってください、話しっこしましょ”
おばあちゃんたち いつまでもお元気で!
(2015.3.6)

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