「ユーカリが丘」見聞記

昨年5月から「自治基本条例」を作ろうという運動が始まった。語感から言ってもあまり面白くなさそうだし、そんなものが何故必要なのか分からない。現に今は「なし」でやっている。
議会や市長が賛成するとも思えない。しかし熱心な市民活動家の誘いを断るわけにも行かず、例によって渋々参加する。
しかし月一回の勉強会を重ねるにつれ、参加者ともども条例制定に関する認識が深まり、会の名称は「自治基本条例を考える市民の会 ~みんなでつくる朝霞のまち~」と決まった。
朝霞市の“これからの10年”のコンセプトが「住みつづけたいまち あさか」であるから、これの実現に向けた自主憲法の制定と考えられなくもない。
勉強会では先進事例をいくつか聞いた。その中のひとつ、栃木県鹿沼市の場合は、「自分たちの町を自分たちで守る」がコンセプト。高齢化と人口減少、東京への移動が目立ち、自治会や消防団の崩壊すら心配される状況の中で、わずかながら住民意識に変化が出はじめたという。“自分たちで地域を守ろうと!”これが自治基本条例に取り組む背景にあった。

翻って我が朝霞市の場合はどうか。都心へ通勤至便、人口微増、低い高齢化率、比較的恵まれた環境にあって、住みにくいという声はあまり聞かない。あえて問題点を指摘するなら、世帯数でも人口でも20%を超えるに至ったマンション族を中心にした市政や地域に対する無関心層の広がりであろうか。選挙の際の投票率の異常な低さがそれを示している。
自治基本条例は住民自治や協働によるまちづくり実現のための道具であって、必ずしも目的では無いともいう。要は朝霞をどんなまちにしていくかの目的意識を共有するものと考えてもよさそうだ。

そうであるならば、まちづくりの成功例をこの目で見ることが必要と外出好き、旅好きの本能が頭をもたげる。溜め込んだ資料をひっくり返すと、島根県の海士町、徳島県の神山町、宮崎県の綾町の事例に行きつく。いずれも平成の大合併に加わらなかった自治体で、これをもってしても自説の正しさが証明でき愉快である。
しかし行くにはいかんせん遠すぎる。自治体職員なら研修費などが支給されようが、今の自分には負担が大きすぎる。
で、千葉県の佐倉市に行くことにした。藻谷浩介氏の著作『しなやかな日本列島のつくりかた』の中で取り上げている「ユーカリが丘」の奇跡を見に行くことにした。同行は市議と市職員。
佐倉市で知っていることと言えば、義民佐倉惣五郎と長嶋茂雄、それに去年見学に行った国立歴史民俗博物館とチューリップ畑くらい。あの田舎のまちでそんな先進的なまちづくりが進んでいるとは思いもよらなかった。

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時刻表を開くと、京成電鉄のユーカリが丘駅からループ状に走る「山万」という鉄道があるのに気付く。以前からこれは何だ?
と思っていたが、これこそまちづくりのお手本、山万株式会社の運営する新交通システムVONAであった。全長5.1㎞に7駅。
すべての住宅が駅から徒歩10分以内に建てられている。軌道の右側に戸建て住宅、マンションが整然と並び、ループを描く内側の円には里山を残している。買収できなかった農地をそのままにしたとも考えられるが、景観としては素晴らしい。

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この山万という会社、元はイトマンのような繊維問屋。取引先の倒産による連鎖を食い止めるため、担保に取ってあった土地を宅地として分譲した。この会社の社長嶋田哲夫氏の凄いところは、不動産業に転業してからの経営方針にある。大手デベロッパーのような「売り逃げ」をしない、つまり入居者に土地を売って、あとはお客さんご自由にではなく、街づくりを当初から指向したことにある。ホテルを呼び、映画館を呼び、大学を呼び、ショッピングセンターを呼び、40年で7,000世帯、人口20,000人の街を作り上げた。
さらに「人間は年を取るものだ」、「年寄りも赤ん坊も混在しているのが自然の街だ」という極めて当たり前のことを前提に街づくりをした。販売する際に自治会に入る意志を確認し念書を取るなどは普通の不動産会社でできることではない。驚くことに学童保育をグループホームと同じ建物の中に作っている。
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そして第二、第三のユーカリが丘を作る気はないと社長は語っている。街は必ず劣化する。だからこの街に磨きをかけることが必要なのだという。高齢化が進む中で、地区内の住み替えの支援や、戸建て住宅の庭木の剪定までやる。利益至上主義の上場企業では絶対できないことを「ユーカリが丘」で見た。

ところで行政はどう見ているのか。市の職員が全国の注目を集める山万を批判することはありえないが、視察に同行してくれた幹部級も会話の中に頻繁に「ボナ」という言葉を口にする。「電車」とか「クルマ」と言わず、「ボナ」という固有名詞が出る。それほど街に定着した交通機関になっている。
「本で読まれたような簡単なことではありませんでした。昔も今もバトルの連続です。」という本音も聞けたが、今や「マラソンの小出コーチ」と並ぶ佐倉の看板である。都心まではいささか遠いハンデはあるが、佐倉市のますますの発展を祈りたい。
(2015.2.11)

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