異色の洋画三作品

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めぐり逢わせのお弁当 The Lunch Box 2013 インド 監督 リテーシュ・バトラ
かつての小津安二郎か成瀬巳喜男の映画を彷彿とさせるインド映画。まず驚くのはダッバーワーラーと呼ばれる弁当配達人の存在。お昼時、大都市ムンバイ(ボンベイ)のオフィス街は、各家庭や食堂から弁当を届けるこの配達人たちで溢れる。彼らは旦那の出勤後、家庭の玄関先に置かれた出来立ての弁当箱をヒョイとつかみ上げ、数えきれないほどの数の弁当箱を両肩にかけ、両腕に持ち、バイクで、車で、列車で旦那の待つ職場へ急行する。その数600万個という。ドキュメンタリー・タッチで描かれるこの一部始終が面白い。
この配達システムは正確無比、英国女王から表彰された等というセリフも飛び出すほどで、彼ら配達人の誇りでもあるようだ。
だがそうは言ってもたまには誤りもある。映画は誤って届いた弁当箱を介して手紙のやり取りを始めた男女の物語。微笑ましく、優しく、美しく、素敵としか言いようのない必見のインド映画。

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NO ノー 2012 チリ 監督 パブロ・ラライン
チリについては南米の共和国であるという以外に、政治についても経済についても知識がない。ただ軍事独裁政権が反対派を徹底的に弾圧してきたこと、独裁者の名前がピノチェトであることは聞いたことがある。
1988年、この独裁者の信認を問う国民投票が行われ、「NO」のテレビ・キャンペーンが独裁政権を倒すのに重要な役割を果たしたという。周辺国が次々と民主化する中で、孤立するチリ。独裁反対派の活動家たちの地道な活動、民主化を求める国民の意識が巨大なマグマとなって民主化を実現したのであって、テレビ・キャンペーンが引導を渡したとは信じ難いが、事実なのだから凄い。
ここに登場する若き広告マンはNO派幹部の声を押し切って、意表をつくキャンペーン番組を作り上げた。最初は歯牙にもかけなかったYES派も世論の変化に気づき焦り始める。当然のようにこの広告マンは軍事政権側から身の危険に晒されるほどの、執拗な嫌がらせを受けるのだが、その都度なんとか切り抜ける。ドキュメンタリー・タッチのサスペンス映画風でもある。
結果、国民投票で勝つのだが、当時実際に放送されたという両派のキャンペーン番組も沢山出てきて面白い。いくら独裁政権が脆くなっていたとはいえ、CMで倒せるとは?の疑問もわくが、元同業者としては快挙として記憶にとどめたい。

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プロミスト・ランド Promised Land 2012米 監督 ガス・ヴァン・サント
アメリカという国の懐の深さを改めて知る。既に2年前、シェールガスを告発する娯楽映画が完成していたのだ。原発の代替エネルギーとしても、中東からの原油依存度を下げるためにも、シェールガスはアメリカの救世主のように見えるのだが。
この映画の主人公は大手エネルギー会社のエリート社員。経済的恩恵から見放された農村を訪れ、シェールガス採掘権の借り上げ契約を次々結んでゆく。そこに現れる環境問題の活動家。水質汚染や土壌枯渇などのキャンペーンを張り、小さな村はやがて二分される。現代社会は発電エネルギーを貧しい地方に押し付ける。全く同じ構造が世界中で起きている。
主人公を演じるマット・デイモンのエリート・サラリーマンに共感する。そしてこんな深刻なテーマを上質な娯楽映画に仕立て上げるアメリカはやはり凄い。
日本にもかつては山本薩夫(白い巨塔、金環触、不毛地帯)のような反権力の社会派監督がいたのだがなあ。(2014.9.18)

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